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コロナ禍でもスタッフが辞めないクリニックの秘密
コロナパンデミック下、多くの病院スタッフがメンタルの疲弊に苦しんでいます。
経営者である院長も受診控えからくる経営問題、スタッフの安全確保、メンタルサポートと対応しなければならないことが山積しています。
こうした状況で、クリニックにはどんな制度が必要でしょうか。
EPISODE 01
小さなクリニックに人事制度は必要ない?
新型コロナ感染症のパンデミックは、社会のひずみや格差を明らかにし、とりわけエッセンシャルワーカーの人びとに大きな負担を課しました。医療従事者への負担はとりわけ大きく、とくに看護師への負担は社会問題にもなっています。
こうした負担は、コロナ患者を受け入れている病院のスタッフだけではありません。クリニックや診療所のスタッフもコロナによって、様々な仕事が増えました。
日に何度も待合室やスリッパの消毒をし、トイレ清掃、換気の徹底、患者さんの発熱チェック、マスク着用の呼びかけ、密にならならないような気配りなど、通常業務以外の仕事が占める割合が増えています。
にもかかわらず患者さんの受診控えで経営が大変だからと、ボーナスをカットする病院は後を絶ちません。その結果、看護師やスタッフの離職を招いた病院もありました。
初めて緊急事態宣言が発出された昨年、地域のクリニックはコロナ対応に手探り状態で、発熱患者の受診拒否などもありましたが、1年以上過ぎて患者さんが少しずつ戻ってくるにつれて、診療もやっと通常に戻りつつあります。
とはいえ、コロナによって増えた備品購入費はバカになりませんし、スタッフの業務外の負担は増すばかりです。そもそも小児科や耳鼻咽喉科では、まだまだ患者さんの受診控えが続いています。
そうした状況下、なんとかスタッフへの感謝の気持ちを表したいと思うクリニック経営者は少なくありません。けれど、毎月のお給料を支払うのも大変というクリニックも多いなかで、もし昇給を希望するスタッフが出てきたら、どのように対応すればよいでしょうか。

コロナで疲弊したスタッフへのねぎらい方は?
A内科小児科クリニックは、正社員の看護師1名、パート看護師2名、正社員事務スタッフ3名というスタッフ構成です。なかでも正社員看護師Bさんは公立病院で働いていたベテラン看護師で、内科、小児科両方の知識が豊富で確かな技術もあるたいへん優秀な人です。子育てと親の介護が重なり、公立病院での勤務が難しくなったため、Aクリニックに転職してきました。 開業直後は、なかなか満足なお給料が払えなかったにもかかわらず、Bさんは文句も言わずクリニックを支えてくれました。
そこでクリニックの経営が軌道に乗って以降は、院長は感謝の気持ちとして、毎年1万円(/月)の昇給をしてきました。 開業からまもなく10年、Bさんのお給料は年収で600万円を超えるほどになってきました。 税理士にも、「Bさんのお給料は突出していますね。そろそろ昇給のペースを下げたらいかがですか?」と助言されるほどです。 確かに、コロナで経営が厳しくなるなか、これまで通りというわけにはいかなくなってきました。
そこでA院長は、率直にBさんにクリニックの現状を説明し、昇給の一時停止とお給料の5%カットを伝えたのです。もちろんBさんがこの申し出を受け入れてくれるものと思っていました。ところが・・・、
「承服できません。コロナになって仕事は増えているし、精神的な疲弊は限界に近いです。通常の昇給だけでも足りないくらいなのに。私だけではありません。他のスタッフに対しても同様です」
とBさんに言われてしまったのです。
クリニックでのワクチン接種も始まり、Bさんへの負担は増える一方です。とはいえ、無い袖は振れないのが現実。けれど、スタッフへの感謝の気持ちは伝えたい……。
税理士に相談したところ、「積極的にワクチン接種をするクリニックには国から補助が出ます*1。この補助金が出るまで頑張っていただきましょう。秋には臨時ボーナスを支払い、年末年始のお休みはいつもより多めにとる。これなら経営的にもなんとかなるでしょう」と助言されました。
さっそくBさんにその旨を伝え、「ボーナスを出せるようになるまで、なんとか頑張ってもえませんか」とA院長はお願いしたのです。
Bさんは、「ボーナスは、私以外のスタッフにも出してください。それから、秋まで頑張りますから、スタッフへの福利厚生として、何かしていただけませんか? 何がいいかはみんなと相談します」と、承諾してくれたのです。
その後、スタッフから、ワクチン接種で長くなる勤務時間中に交代で休憩を取れるようにしてほしい、そして置き菓子、コーヒーサーバーを設置してほしい、という2点の要望が出てきました。 A院長が快諾したのは言うまでもありません。
経営が厳しくとも、低予算でできることはあります。また、コロナ対策には国の補助金が出ますので、それを最大限利用してスタッフにしっかり還元する。その姿勢がぶれなければ、この感染症パンデミックはスタッフと一緒に乗り切れることでしょう。
(文責:ブランディングエディター 内田朋恵)
*1 令和3年度新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業(医療分)の実施に当たっての取扱いについて 、
「令和3年度新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業(医療分)の実施について」の一部改正について
