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「マイナ保険証」本格化と予防接種のデジタル化で、医療現場で何が変わる?


(2026年8月)

2026年8月1日から、有効期限が切れた従来の健康保険証が完全に使えなくなります。
厚生労働省のWEBマガジン「厚生労働」に、「医療機関・薬局では、マイナ保険証か資格確認書をご提示ください」という記事がアップされました。*1 
2025年12月1日、従来の健康保険証の使用は修了しましたが、その後も「有効期限切れに気付かず健康保険証を持参した場合は利用可能」となっていたこの経過措置が、いよいよ2026年7月31日で打ち切られたのです。8月以降、医療機関・薬局の窓口では、「マイナ保険証か資格確認書をご提示ください」という案内が徹底されることになります。

これまでの経過期間で、マイナ保険証や資格確認証への切り替えはだいぶ進んだと思いますが、それでも窓口では今後、次のようなトラブルが想定されます。

①    マイナ保険証の利用登録を済ませていない患者が、従来の保険証しか持たずに来院するケース
②    マイナンバーカードやスマートフォンのマイナ保険証機能を持ってきたが、電子証明書の有効期限が切れていたり、顔認証付きカードリーダーの機器トラブルで受付できないケース
③    資格確認書と「資格情報のお知らせ」を混同して持参してしまうケース

同記事では、マイナ保険証での受付ができない場合でも、マイナンバーカードとあわせてマイナポータルの資格情報画面を提示すれば、窓口で10割負担をせずに受診できるとされています。こうした代替手段をあらかじめ把握し、患者さんにきちんと案内できる体制を整えておくことが、8月以降のトラブル回避の鍵になりそうです。

医療DX化の流れは、保険証にとどまりません。厚生労働省は2026年7月23日、第66回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会を開催し、予防接種事務のデジタル化にともなう、デジタル予診票での接種同意の取得方法について議論がされました。
予防接種のデジタル化については、新型コロナウイルス感染症への対応において、「① 紙をベースとした予防接種事務の事務負担 ② 予防接種の有効性・安全性に関する調査のための情報基盤の不存在」が明らかになり、「予防接種事務のデジタル化に必要な規定を盛り込んだ改正予防接種法・関係法令については、本年6月1日に施行した」ところです。*2 
分科会に提出された資料によると、現在、先行してデジタル化を開始している自治体においてはすでに利用されている「デジタル予診票」ですが、「現行運用を踏襲する場合、医師の診察・説明後に、診察室において被接種者が自身のスマートフォン等でマイナポータルを開き、接種同意の有無を回答する等の必要がある」ことが課題となっているようです。
そこで分科会では、スムーズな運用に配慮して、「被接種者が、医師の説明・診察を受ける前に、マイナポータルで接種実施の希望有無(≠接種実施の同意有無)を回答する」ことができるようにし、医師の説明ののち、被接種者は「接種実施の希望有無にかかわらず、接種実施の同意有無を医師に口頭で伝達」し、医師が「接種実施の同意有無を、被接種者に代わり医療機関端末上のデジタル予診票に入力する」という運用案が提示され、大筋で了承されました。
厚生労働省は、「予防接種の実施に当たって、医師が法令に従って、説明・同意確認・入力を行った場合には、その手続自体が法令に基づく適正なものとして評価され、後日の紛争においても医師個人に不利な責任が及びにくい構造となる」と説明しています。
予防接種実施規則の改正案は2026年9月の施行を予定しており、マイナ保険証と同様、「対面での説明」と「記録のデジタル化」を両立させる仕組みづくりが、ワクチン接種の現場でも進みつつあるといえます。

このように、保険証も予防接種も、医療DX化の流れそのものを止めることはできません。
過去の受診・服薬データに基づくより良い医療や、確定申告時の医療費控除の簡略化など、患者側のメリットは確かに大きいですが、一方で、先の国会で可決・成立した個人情報保護法改正案により、「病院で書いた問診票、薬局での処方履歴、健康診断の結果――。そうした情報が、一定の条件のもとで自分の知らないうちに別の企業へ渡り、しかも個別に拒む機会もない」*3 ということが現実になるかもしれません。要配慮個人情報を取り扱う医療機関は、今後ますますデータ管理に細心の注意を払わなければならなくなるでしょう。
データ管理の手間だけでなく、オンライン資格確認の機器整備、電子カルテの導入、そして今後義務化が進むデジタル予診票への対応までフルセットでDX化を進めた場合、その金額は小さな診療所の経営体力を直撃する可能性があります。
医療DX化は止められませんが、コンサルに言われるままに促進するのはハイリスクです。国や自治体のデジタル関連の補助金がどこまで使えるのかをよく調べ、無理のない投資計画を組み立てることが、これからの医療DX時代を生き抜くための現実的な一歩になりそうです。

※最終閲覧日:2026年7月26日

(ブランディングエディター:内田朋恵)


*1「医療機関・薬局では、マイナ保険証か資格確認書をご提示ください」厚生労働省WEBマガジン「厚生労働」
*2「予防接種事務のデジタル化の施行状況と今後の方針について」第66回厚生科学審議会予防接種 ・ ワクチン分科会 資料2-1(2026(令和8)年7月23日) 
*3「AI開発なら同意不要 病歴も渡りうる個人情報保護法改正案の危うさ」朝日新聞デジタル(2026年7月6日 6時50分配信)

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