医療DX推進のために電子的診療情報連携体制整備加算が新設
(2026年4月)
今月も2026年度診療報酬改定について取り上げます。
3月5日、厚生労働省は2026年度診療報酬に関する関係告示の公布・通知の発出を行いました。一つ一つの詳細については、特設ページが設けられていますので、そちらを参照してください。*1
今回取り上げるのは、「電子的診療情報連携体制整備加算」についてです。答申の段階では明らかにされていなかったのですが、医療DX推進について評価する項目として新設されました。具体的には、「医療情報取得加算・医療DX推進体制整備加算を廃止し、診療録管理体制加算におけるサイバーセキュリティ対策要件の見直しを行ったうえで、初診料、再診料、入院料の加算として【電子的診療情報連携体制整備加算】を新設する」ことになりました。下図参照

「令和8年度診療報酬改定 7.外来医療の機能分化・強化等 P32」
この加算を行うための施設基準として、以下の内容が明記されていますが、ここで注目したいのが、「(5)のマイナ保険証利用率が30%以上」、「(8)電子処方箋を発行する体制又は調剤した薬剤に関する情報を電子処方箋システムに登録する体制を有していること」、そして「(9)以下のアからウの全て又はエを満たす電子カルテを有していること」です。

「令和8年度診療報酬改定 7.外来医療の機能分化・強化等 P33」
まず、「(5)のマイナ保険証利用率30%以上」「(8)電子処方箋を発行する体制又は調剤した薬剤に関する情報を電子処方箋システムに登録する体制を有していること」についてです。
マイナ保険証は、26年1月時点での利用率が64.62%となっており、平均利用率ではこの要件をクリアしているとはいえ、一方で、有効期限が切れた従来型の健康保険証での受診を3月末まで認める措置を、さらに7月末まで延長することを厚労省は3月19日に発表したばかりです。*2
そして「電子処方箋」にいたっては、医科診療所の導入率は25.3%、病院の導入率は19.0%とこの要件を満たす医療機関がいかに少ないか明白です。*3
電子カルテについても課題は山積しており、3月12日に開催された「第28回健康・医療・介護情報利活用検討会医療等情報利活用ワーキンググループ」でも議題に上っています。*4
ちなみに令和5年時点の一般診療所の普及率は55%です。
厚労省は「遅くとも2030年には概ねすべての医療機関において必要な患者の医療情報を共有するための電子カルテの導入を目指す」(2023.6.2 医療DX推進本部、医療DX の推進に関する工程表)としていますが、この資料によると、診療所約10.5万施設のうち、未導入診療所約4.7万施設、導入済み施設でもオンプレの診療所約4.7万施設、クラウド型電子カルテ診療所約1万施設と仕様が異なっており、政府が推進する「標準仕様に即した低価格のクラウド型電子カルテ」への移行は、そう簡単ではありません。
今回の診療報酬改定を見ると、なんとしても医療DXを推進していきたいという政府の意向はよくわかりますが、アクセルばかり踏み続けることには疑問を呈します。
地域医療を支えている高齢医療従事者の医療機関では、そもそも電子カルテの導入すら難しいケースもあります。それを無視して医療DX化に突き進むことは、保険証廃止の失敗を繰り返すことになりかねません。
そもそも、診療情報を全国の医療機関で共有することが一番の重要課題であることは、先のワーキンググループの委員からも意見が出ています。デジタル弱者を取り残さない医療DX推進にすることを忘れないでほしいと願うばかりです。
※WEB情報の最終閲覧日は2026年3月22日です。
(文責:ブランディング・エディター 内田朋恵)
*1「令和8年度診療報酬改定について」厚生労働省HP
*2「期限切れ保険証、7月まで受診可能 混乱回避で暫定措置延長―厚労省」時事通信 内政部 JIJI.COM(2026年3月19日11時08分配信)
*3「電子処方箋 施設別の導入状況」デジタル庁HPより
*4「電子カルテの普及について」令和8年3月12日厚生労働省医政局医療情報担当参事官室(第28回 健康・医療・介護情報利活用検討会医療等情報利活用ワーキンググループ2026(令和8)年3月12日)