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保険証廃止にもかかわらず進まない、医療DX推進の本当のところ


(2025年12月)

2025年12月2日から原則として健康保険証が使えなくなり、マイナ保険証に移行になります。*1  
ところが、厚生労働省の発表(11月13日現在の最新データ)によると、2025年10月のマイナ保険証利用率は37.14%であった*2   ということで、実際は4割弱の人しかマイナ保険証を利用していないにもかかわらず、6割強の人が利用する保険証が廃止となってしまったのです。
こうした現状に対処するため、11月12日、厚生労働省は「マイナ保険証を基本とする仕組みへの移行について(周知)」という事務連絡を医療関係団体に急遽通知。とりあえず、すべての保険証が2026年3月末まで使えることになりました。*3 
多くの国民の反対にもかかわらず強行突破で健康保険証を廃止したことの間違いが表出した結果ですが、そもそもマイナ保険証に移行したいなら、そのメリットをもっとPRしていくべきだったのでしょう。メリットが見えなければ、人は動きません。
実際、医療DX推進については医療現場でもいまだに戸惑う声が多いことが、11月21日に開催された中央社会保険医療協議会の総会および診療報酬改定結果検証部会でも報告されました。*4 
この報告は、「令和6年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(令和7年度調査)」をもとに行われました。こうした調査は2年に1度の診療報酬改定論議の際に行われるもので、調査目的としては、「前回改定が医療現場にどのような効果・影響を及ぼしているのか」、「思うように効果が出ていない」のであればどのようなテコ入れが必要か、「狙いとは異なる方向に進んでいる」ならばどのような軌道修正が必要か、などが挙げられます。

今回の特別調査*5    は、
(1)長期処方やリフィル処方の実施状況調査
(2)後発医薬品の使用促進策の影響及び実施状況調査
(3)医療DXの実施状況調査
(4)かかりつけ歯科医の機能の評価等に関する実施状況調査
(5)かかりつけ薬剤師・薬局の評価を含む調剤報酬改定の影響及び実施状況調査
の5項目について、2025年8月にオンラインと郵送で行われました。*6 

11月21の中央社会保険医療協議会の総会および診療報酬改定結果検証部会での報告によると、51.3%の診療所が「本人同意の下で、全国の医療機関等が必要な診療情報を共有することにより、切れ目なく安全かつ質の高い医療を提供することができる」とその意義を評価していますが、「医療 DX 推進体制整備加算の届出状況別に見ると、医療 DX 推進体制整備加算 1~3の届出病院、届出診療所ともに、それ以外の施設より意義があると回答する割合が高い傾向が見られた」とあるように、DXの導入度によって評価に差があることがわかりました。
ほかの評価を見てみると、「保健医療データをマイナポータルで一元的に把握できるようになることで、個人の健康増進に寄与する」は37.2%、「デジタル化により医療現場において業務の効率化や人材の有効活 用が実現される」は32.8%と3~4割に診療所で一定の評価がある一方で、「特に意義はない」も16.9%となっています。これを細かく見ていくと、「医療DX推進体制整備加算」無届けの診療所の26%が「特に意義はない」と答えており、導入度によって評価に差があることがここでも明らかとなっています。
次に診療所における電子カルテの導入状況を見てみると、平均では71.0%になりますが、「医療DX推進体制整備加算」無届けの診療所が46.2%と5割を割っており、DX化における診療所間格差はかなり深刻であることがわかります。
そこで診療所が「医療DX推進体制整備加算」を届けない理由を見てみると、「「電子処方箋を発行する体制又は調剤情報を電子処方箋管理サービスに登録する体制を有していること」という施設基準を満たすことが難しいため(令和 7 年 3 月 31 日まで経過措置)」という回答が34.5%と最も多くなっています。次いで「加算を算定するためのコストや手間が大きいため」が31.6%と、診療所では「加算を算定するためのコストや手間が大きいため」や「外来診療において医療 DX を推進する必要性や有用性を感じない」現状が見て取れます。
ここには地域格差もあると推測されますが、この調査対象が大都市部(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、愛知県及び大阪府)だけで36.7%を占めており、それでもこの結果だったのですから、もし調査対象がきれいに全国に散らばっていたら、DX推進はもっと遅れている結果が出たのではないかと考えられます。
医療現場のこうした現状をみれば、マイナ保険証の利用がなかなか進まない理由も見えてきます。地方を中心に、医師の高齢化の問題も深刻です。
新しく開業する医師にとっては、医療DX化はデフォルトで行うものだと思いますが、既存の開業医にとっては、なかなか頭の痛い問題となっています。日本の社会保障制度を維持するためにも、地域の診療所の医療DX推進の問題は医師個人に任せるのではなく、国が戦略的に進めるべきものなのではないでしょうか。

※WEB情報の最終閲覧日は2025年11月24日です。

(文責:ブランディング・エディター 内田朋恵)



 *1「令和7年12月1日をもって、健康保険証が使用できなくなります」全国健康保険協会HPより
 *2「マイナ保険証の利用促進等について」(第203回社会保障審議会医療保険部会 資料3 2025年11月13日)
 *3「【11月12日厚労省事務連絡】すべての保険証(社保・国保・後期高齢)が2026年3月末まで使えます」全国保険医団体連合会ニュース(2025年11月12日) 
 *4「令和6年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(令和7年度調査)の報告案について」(中医協検-3-2 7.11.21)
 *5「令和6年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(令和7年度調査)の結果について」(2025年11月21日 中央社会保険医療協議会 診療報酬改定結果検証部会)
 *6「令和6年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(令和7年度調査)へのご協力のお願い」(2025年8月)

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