インフルエンザの治療薬「オセルタミビルカプセル75mg『サワイ』」の使用期限がさらに2年延長
(2025年7月)
2025年6月16日、厚生労働省は事務連絡として「オセルタミビルカプセル75mg『サワイ』(流通用製剤)の使用期限の取り扱いについて」を発表しました。*1
この薬については、「令和5年5月23日に室温での有効期間を4年から6年に延長する届出がなされ」、同年6月30日付の事務連絡で、流通品の使用期限の取扱いについて延長の通知があった薬品です。
今回の連絡では、その後、「今般、追加で得られた安定性データを踏まえて、令和7年(2025 年)6月6日に、室温での有効期間を6年から8年に延長する届出がなされ、この有効期間は現在流通している製剤にも適用可能と判断いたしました」と、アナウンスされました。
この薬剤はタミフルの後発品で、A型・B型インフルエンザウイルス感染症の治療・予防に用いられる薬剤です。
厚労省は、この連絡で「貴重な薬剤を無駄にせず有効に活用する観点から、使用期限の短い製剤から使用していただくよう改めてお願いいたします」と記している通り、昨今の薬品不足、特に後発品の不足と社会保障費の増加を少しでも抑制したいという考えが見えてきます。
さて、この薬に関しては、2021年に有効期間が3年から4年に延長されたことで、2023年3月に「既に市場に流通している製剤の使用期限について『4年』として取り扱ってよい」という事務連絡がなされました。さらに3か月後の2023年6月には有効期間が4年から6年に延長され、「有効期間が3年、4年」と外箱に印字されている製剤であっても「有効期間6年の製剤として取り扱ってよい」という事務連絡がありました。したがって、今回で3回目の有効期間の延長となります。
ここで問題になるのが、外箱に印字された有効期間と変更後の実際の有効期間の違いにより誘発される人的ミスです。
今回の事務連絡には、包装で印字されているロット番号、使用期限と、変更後の実際の使用期限が一覧として掲示されていますので、医療機関は一つ一つ確認し、ミスなく薬剤の有効活用を進めていただきたいと思います。
国が購入した新型コロナ感染症の抗ウイルス薬、約560万人分のうち、約430万人分が使用されずが、期限切れで廃棄となったことは記憶に新しいと思います。*2
感染症の大流行時には、医薬品やワクチンの世界的な争奪戦が起こることは周知の事実ですし、薬剤やワクチンの確保量が予測通りに使用されることは不可能だと思います。
とはいえ、現在も後発医薬品を中心に、供給不足は続いているわけで、昨冬のインフルエンザの大流行を考えれば、まだ使用できる坑ウイルス薬は、有効に利用して感染症の拡大を抑えていきたい、という厚労省の考えももっともでしょう。
各製薬会社は、薬の安定供給のため、薬価制度改革を求めています。実際、今年になっても続く物価高騰、原材料高騰に薬価が対応できていないと、答えています。*3
ジェネリック医薬品の供給不足は、どこか一つの問題を取り除けは解決するような単純なことではなく、日本の医薬品業界の構造的な問題であることは、すでに明らかになっています。
今回の使用期間の延長が、少しでも薬不足の一助になればと思います。
※WEB情報の最終閲覧日は2025年6月22日です。
(文責:ブランディング・エディター 内田朋恵)
*1 事務連絡 令和7年6月16日「オセルタミビルカプセル 75mg「サワイ」(流通用製剤)の使用期限の取扱いについて」厚生労働省医薬局医薬品審査管理課