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the医院開業|クリニックの社会保険制度の選択

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新規開業時に加入する社会保険について (セカンドライフの年金設計)

  1. クリニックの社会保障制度と福利厚生制度をどう考えるのか
    その費用負担と効果

休診のリスクは院長の体に起因するものだけではありません。
今回は院長の健康上の理由ではなく、クリニックの罹災による休診のリスクについて考えていきたいとおもいます。


1.クリニックの社会保険制度の選択

個人開業医の場合、院長については、医師国保(または国保)と国民年金の加入となりますが、従業員の社会保険をどうするかについては国保・医師国保・協会けんぽ、国民年金・厚生年金の組み合わせに選択肢があるのをご存じでしょうか。

常勤が5人未満の個人医院に勤務する従業員は、一般的にはタイプAの国民健康保険、国民年金に自分で加入することになります。(事業主が医師国保に加入して従業員も一定の条件を満たせば、タイプBも可能となる)。5人未満の医院でも、従業員の福利厚生のために、従業員の同意を得て、任意適用事業所として社会保険に加入することも可能です。この場合、原則として、タイプDの協会けんぽと厚生年金の強制適用となります。しかし、事業主が医師国保に加入していれば厚生年金に加入し、医療保険については、「健康保険被保険者適用除外承認申請書」を提出してタイプCの医師国保へ加入することが出来ます。

個人開業で従業員5人未満の場合
  加入パターン 医療保険 年金
院長   国保 国民年金
  医師国保 国民年金
従業員 A 国保 国民年金
B 医師国保 国民年金
C 医師国保 厚生年金
D 協会けんぽ 厚生年金

また常時5人以上の従業員を雇っているクリニックの場合は、必ず社会保険に加入する義務が生じるため、タイプFの加入パターンとなりますが、この場合でも医療保険については、「健康保険被保険者適用除外承認申請書」を提出してタイプEの医師国保へ加入することが出来ます。(地域によっては、5人以上の診療所の場合、先生と家族以外の従業員はFのみの選択)

個人開業で従業員5人以上の場合
  加入パターン 医療保険 年金
院長 医師国保 国民年金
  協会けんぽ 国民年金
従業員 E 医師国保 厚生年金
  F 協会けんぽ 厚生年金

使用者(院長)にとってタイプによる大きな違いは、国保・医師国保・国民年金の保険料は原則個人が負担するのに比べ、協会けんぽ・厚生年金の保険料は労使折半となり、使用者である院長にも従業員の社会保険料の負担が生じてくる点が挙げられます。

つまり、タイプA、Bでは、院長の社会保険料負担なし。タイプC、Eは厚生年金保険料の半額が院長負担。タイプD、Fでは、協会けんぽの保険料と厚生年金保険料の双方の半額が院長負担となります。 従業員にとってみれば医療保険については、医師国保の保険料は定額で、協会けんぽは収入に応じて高くなり、国保の保険料は世帯収入や資産に応じて計算されることになります。(自治体によって、保険料率や計算方式が異なる)。


1.どの医療保険が良いのか

どの医療保険が良いのかは、保険料負担で考えた場合では所得が高い程、報酬比例の保険料よりも、定額保険料の医師国保が魅力的です。また、協会けんぽは、報酬比例の保険料だが、半額は使用者負担となるため、従業員の個人負担は半額となります。個々の収入に応じて試算してみる必要がありますが、総じて医師国保を選択するケースが多いように思います。

保障内容の充実度で考えれば、協会けんぽに加入していれば、勤務先で気兼ねなく自家診療も受けられ、出産時や万一のけがや病気で長期間就業不能となった場合でも、出産手当金や傷病手当金で収入の保障が受けられるので安心して働けるというメリットがあります。 年金に関しては、国民年金よりも厚生年金の方が将来受け取る年金額が多くなるのは何度も触れていますが、従業員にとってみればその保険料の半額を給与の他に使用者が負担してくれる厚生年金の方が良いのは明らかです。

しかし、使用者(院長)にとって、協会けんぽの保険料は9.97%程度(地域により異なる)40歳以上では11.52%程度(地域により異なる)を労使折半、厚生年金保険料は16.776%を労使折半となるため、タイプCでは、8.4%程度、タイプDでは13%程度の人件費が負担増となります。 タイプDやFのクリニックでは、求人広告で謳われている社会保険完備となり、求人に有利なポイントとなりますが、費用負担や従業員への福利厚生をじっくり考えたうえで、クリニックの社会保険の加入パターンを決める必要があるといえます。

昨今、社会保険料負担はどんな業種でも重荷となっていて、医院経営においても13%の人件費増はインパクトが強く、常勤職員を4名以下に抑えて、週1.5日〜2日勤務のパート職員を数多く採用し、社会保険適用事業所とならないようにシフトを組んで回しているクリニックが多いようです。

夫がサラリーマンのパート職員の社会保険
  勤務形態 医療保険 年金
A 労働時間・労働日数ともに常勤の3/4以上 常勤と同じ扱い 常勤と同じ扱い
B 3/4未満かつ収入が130万未満 夫の健康保険の扶養 夫の扶養
第3号被保険者
C 3/4未満かつ収入が130万以上 自身で国保に加入 自身で国民年金に加入
第1号被保険者
(A)
1日の労働時間が常勤の労働時間の3/4以上で、出勤日数も常勤の3/4以上の 場合は、常勤と同じ扱いになるので、加入パターンに応じて院長の社会保険料負担が生じます。
(B)
週に2日程度の勤務で収入を130万円以下に抑えれば、夫の被扶養者としての扱いに なり、院長・職員ともに社会保険料負担が生じません。
(C)
収入は130万円を超えると、夫の扶養から外れてしまうが、クリニックでは社会保険適用除外者となるため、自分で国保と国民年金の加入となり、社会保険料負担が生じます。 そのため、150万円程度の収入では、130万円の時よりも手取り額が少なくなってしまうことになります。

院長はパート職員の収入を把握しながら、シフトをコントロールしていかなければ、年の瀬近くになって年間収入枠(扶養範囲の枠)を超えてしまうとパート職員からの申し出があり、年末には出勤できるパート職員が誰もいないなんてこともあるようなので、注意が必要です。

(文責)ファイナンシャルプランナー 松木祐司

執筆者紹介

松木 祐司
FPアソシエイツ&コンサルティング株式会社
ファイナンシャルプランナー
  • CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。
  • 外資系損害保険会社・外資系生命保険会を経て、特定の金融機関に所属しない独立系ファイナンシャルプランナーとなる。
  • 主にドクターとご家族のライフプラン実現のための、資産運用設計、保険設計、相続対策や医院経営のリスクマネジメントに取り組む。

【著書・寄稿】
得する保険の選び方 いまこそ見直そうあなたの保険 退職金がっちり運用 他
ジャミック・ジャーナル、クリニックマガジン、日本歯科新聞、日本経済新聞、 週刊東洋経済、 週刊エコノミスト、マネージャパン、 あるじゃん 他
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