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開業準備「虎の巻」開業トレンド
医院開業マーケットを様々な切り口で分析
これからの開業はどうなっていくのか?
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介護サービス
- 介護サービスや在宅医療の政策は今後も充実する方向に。
これからの診療所経営を成功させるために、介護を意識した「開業」と「経営」を!
介護保険とともに
診療所の開業で切っても切れない関係にあるのが介護保険です。日本の人口の高齢化率が上昇し、外来を受診する患者の多くが高齢者となっています。これから診療所経営を成功させていくには介護保険を意識していく必要があります。
1.対象が高齢者であること
表2の国民生活基礎調査概況の「要介護と別に見た介護が必要となった主な原因の構成割合」を見ると脳血管疾患、認知症、高齢による衰弱、関節疾患、骨折転倒による疾患で7割以上を占める一方、視覚・聴覚障害などにより要介護になった人々もいます。
医療機関経営と高齢者は密接な関係にあります。「国民健康保険医療給付実態調査報告」等によると高齢者の受診率と1件当たりの受診日数が現役世代と比較して多くなっています。これは年齢が高くなるほど受診率が高くなり1件当たりの受診日数が増える傾向にあります。入院についてはより傾向が強くなります。
外来を中心としている診療所では受診率の高い高齢者を無視できず経営を安定させるためには高齢者であり要介護者を抜きには語れません。特に内科系診療所では在宅医療を含めて介護保険とのスタンスが重要となります。
2.介護保険と在宅医療、外来診療
最新の診療所の開業の在り方で注目を集める在宅医療は介護保険と切っても切れない関係にあります。診療所そのものは、「在宅時医学総合管理料」を算定し患者の自宅へ訪問したとしても連携する訪問看護ステーションは介護保険での訪問が中心となります。また、要介護認定のための主治医意見書も医療機関で作成することになります。
また、介護老人保健施設などへ入所している患者の診療を頼まれることもあります。介護老人保健施設については、請求できる医療行為と請求できない医療行為があります。診療報酬請求できる医療行為は、初診料や再診料、往診料、処置、手術、画像診断などであり、診療報酬請求できない医療行為は、投薬や注射、検体検査、生理機能検査などとなっています。
もし、どうしても算定できない医療行為を行う必要があるとすれば、介護老人保健施設と協議の上で薬などを出してもらうのか、施設が自費で受診した医療機関に支払うことも可能です。
このような施設で暮らす人々も内科以外の疾患で他科を受診することも珍しくないため診療報酬算定ルールを知っておくと便利です
3.営利法人をうまく利用する
介護保険の特徴である営利法人が参入可能であることも知っておくと便利です。
診療所経営が安定し、次のステップを考えるとき介護サービスへの参入を考えるかもしれません。その時に、医療法人で参入するのではなく株式会社といった営利法人で参入することも選択肢の1つです。法人を分けることのメリットは、事業ごとの営業成績がはっきりすることと営利法人の経営の自由度にあります。
医療法人では収益事業に対して規制されています。そのため不動産管理などが禁止されています。営利法人では、不動産管理や物品販売も自由であるため高齢者専用賃貸住宅の開発や医療・介護に関連する物品の販売も可能となります。
また、事務などを営利法人の所属にすることで医療法人と営利法人の双方へ派遣することも可能であるため人材も流動的に利用しやすくなります。
4.特定施設の経営
介護事業は、施設サービスが経営上安定的です。介護老人福祉施設や介護老人保健施設といった介護系のサービスに参入することは地域の医療保険福祉計画により難しいかもしれませんが、「特定施設」への参入はできます。
「特定施設」とは、有料老人ホームや養護老人ホーム、軽費老人ホーム、適合高齢者専用賃貸住宅を指します。適合高齢者専用賃貸住宅と高齢者専用賃貸住宅の違いは、表3に示す厚生労働大臣が定める基準をクリアしているかどうかにあります。
特定施設の経営は、2つのメリットがあります。営利法人として安定的に賃料収入と介護サービス提供の収入が得られます。また、医療側では訪問診療や往診などを行うことで安定的な在宅医療による収入が保証されます。最近では、訪問診療についても特定施設の場合は減額されるようになりましたが、それでも特定施設は訪問効率が良いため収入的に悪くありません。
特定施設の経営についてもシミュレーションしてはいかがでしょうか。
表2 厚生労働大臣が定める基準 |
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総括
医療と介護は、密接な関係にあります。高齢化率が上がり医療費が厳しくなればなるほど、介護サービスや在宅医療が充実するような政策となっていきます。経営が時代遅れとならないようにするには、今から介護を意識した開業と経営を行うことです。
(文責:木村憲洋)