
- 開業に関する欠かせない情報が満載
少子化時代に求められる診療所
少子化が進めば、これまでの医療制度を維持していくことも困難に。
このような社会では、どんな診療所が求められるのでしょうか。
EPISODE 01
開業する場所を自由に選べなくなる日がくる?
診療報酬の抑制による医療現場への影響
全国の病院が経営難に陥っており、このままでは医療が崩壊しかねない・・・・・・。
2025年6月12日、開業医等で構成する「全国保険医団体連合会」(保団連)は厚生労働省で会見を開き、診療報酬の引き上げを求めました。*1 2024年の診療報酬抑制のため、昨今の物価上昇により高騰する光熱費、材料費、人手不足と働き方改革などにより高騰する人件費を補填できない状態が続いている。さらに医療DX費用の控除対象外消費税の問題が病院経営に重くのしかかっている・・・・・・。
会見からは、医療現場の悲痛な声が紹介されていましたが、社会保障費削減によるこうした訴えは医療現場よりも先に介護現場から出されており、その影響はすでに表出しています。実際、2024年の介護報酬改定により訪問介護事業所の倒産が過去最多に上っていることがわかっています。*2 特に地域を支える小さな訪問介護事業所の経営が立ち行かなくなっており、国が進める地域包括ケアシステムにも影響しかねない状況です。
2024年の診療報酬の抑制による影響が、経営基盤が弱い訪問介護事業所に遅れること1年、診療所にもボディブローのようにじわじわと効いてきている、といっても言い過ぎではないでしょう。 こうしたなか、2024年12月25日、厚生労働省社会保障審議会は「2040 年頃に向けた医療提供体制の総合的な改革に関する意見」*3 を取りまとめました。 これは、団塊ジュニア世代が65歳以上になる2040年までに、医療提供体制を改革しなければ、日本の医療制度は立ち行かなくなるという危機感から出された意見書です。
実はこの1週間前の12月18日には、同じ厚労省の新たな地域医療構想等に関する検討会から、「新たな地域医療構想に関するとりまとめ」が提出されており*4 、25日に出された意見書はこの時の部会での話し合いをもとに出されたものです。 いずれにせよ、少子化、超高齢化が止まらない日本社会で、このままの医療提供体制を維持することの難しさが約70ページにわたり書かれているのがこの意見書なのです。
医療体制改革はまずは医師の偏在の問題から
団塊世代が75歳以上になる2025年に向けて、これまでもかかりつけ医制度の充実や地域包括ケアシステムの推進など、さまざまな改革案が検討されてきました。しかし、医療制度をめぐる様々な問題はまだまだ解決途上です。 だからこそ出された意見書なのですが、なかでも早急に対応しなければならない課題は、「医師の偏在対策」(*3 のP40「医師偏在対策に関するとりまとめの概要」参照)です。
現在、「特に診療所の医師は高齢化しており、診療所数は人口が少ない二次医療圏では減少傾向、人口の多い二次医療圏では増加傾向にある」ことが、意見書でも問題とされています。 医師偏在問題に対しては、これまでも医学部定員の適正化や地域枠の創設などが行われてきましたが、今後は「①医師確保計画に基づく取組を進めつつ、経済的インセンティブ、地域の医療機関の支え合いの仕組み、医師養成過程を通じた取組等を組み合わせた総合的な対策を進め」、「②若手医師を対象とした医師養成過程中心の対策から、中堅・シニア世代を含む全ての世代の医師へのアプローチ」へと対象をより大きく取る施策へと変わっていくでしょう。
さらには、「③人口規模、地理的条件等から医療機関の維持が困難な地域については、医師偏在指標だけでなく、可住地面積あたりの医師数等の地域の実情を踏まえ、都道府県ごとに支援が必要な地域を明確化の上で対策を実施」と、人口減少地域へのテコ入れについても明確にしています。
実際に国は、 先述の意見書公表の同日、「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」*5 も公表し、上記の3つの課題解決に向けた政策パッケージを示しました。 この問題についてはすでに「外来医療計画」*6 を示し、「診療所の医師の多寡を外来医師偏在指標として可視化し、新規開業希望者等に情報提供する」ことも決めています。
「外来医療に係る医療提供体制の確保に関するガイドライン」*7 においても、「都道府県は外来医療機能に関する協議の場を設置し、少なくとも外来医師多数区域においては、新規開業希望者に対して、協議の内容を踏まえて、地域に必要とされる医療機能を担うよう求める」こととしており、国の本気度がうかがえます。
つまり、今後は外来医師多数区域では自由な開業が難しくなる恐れがあるということです。 この変更は、「医療法及び医師法の一部を改正する法律」(平成30年法律第79号)の施行によりすでに実施されており、「都道府県は、医療計画において、地域の外来医療機能の偏在・不足等への対応に向けた施策内容を「外来医療計画」として定めること」とされ、令和2年度から取り組みが進んでいることです。令和6年度以降は3年ごとの見直しが行われる予定で、今後、各都道府県で「外来医療計画」がどのように変わっていくか、推移を見守りたいと思います。
いずれにせよ、今後は限られた医療資源を効率よく利用し、医療提供体制を確保していかなければなりません。こうした取り組みもその対策の一つであり、ますます加速してくことは間違いないことでしょう。
(文責:ブランディングエディター 内田朋恵)
参考文献
*1 「「もう限界だ」医療現場から悲鳴…診療報酬の抑制で病院経営が苦しく 「崩壊の危機」保団連が訴え」弁護士ニュースドットコムニュース 6月12日17:24配信
*2 「【2024年介護報酬改定】訪問介護切り捨て 倒産・休廃業が過去最多に」全国保険医団体連合会医療ニュース 2024年4月5日配信
*3 「2040 年頃に向けた医療提供体制の総合的な改革に関する意見」令和6年12月25日 社会保障審議会医療部会
*4 第114回社会保障審議会医療部会 資料 令和6年12月18日
