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患者満足度を上げるためにできること
患者指向の経営のために行われる患者満足度調査。
その数値が上がると医療現場にどんな効果があるのでしょうか?
EPISODE 01
医療現場にマーケティング調査は必要か?
患者満足度の結果に満足することの落とし穴
いまや多くの病院で実施されている患者満足度調査ですが、これは1970年代ころから欧米で出てきた考え方です。
患者満足度(PS=Patient Satisfaction)は患者の期待と実際とのギャップの結果を測るもので、調査では患者の主観を5段階で評価させる設問が多く見られます。受診した先の病院やクリニックで、アンケートに回答した経験のある患者さんも増えてきていると思います。
実は、厚生労働省が3年ごとに行っている「受療行動調査」のなかにも「満足度」という項目が設けられており、最新の令和2(2020)年度の調査結果では、平成8(1996)年から24年間の満足度の推移をみることができます。*1 (P22参照)
この調査結果を見ると、「病院に対する満足度(外来)」において「満足」していると答えた人の割合は、1996年は満足が48.1%だったのが、2020年には64.7%まで上昇しています。ほかにも多くの項目(医師の対応、スタッフの対応、待ち時間、診療時間など)で満足度が向上していることがわかります。
つまり、「保険医療2035」で示された「量の拡大から質の改善へ」「インプット中心から患者にとっての価値中心へ」「キュア中心からケア中心へ」という考え方への転換は、医療現場では確実に進んでいるようなのです。
さて、多くのクリニックや病院で活用されている患者満足度調査ですが、最近では問題も指摘されています。
調査で患者満足度が上がっていれば、経営改善がうまくいっているということになりますが、経営者である院長もスタッフもその調査結果に満足してしまい、その後の経営改善に生かしきれないというのです。
ほかにも、患者満足度調査は患者さん自身の印象を問う調査であるため、患者さん一人ひとりの評価基準が違うという問題も指摘されています。
要するに同じ対応をしても患者さんが受ける印象は違うため、その時の患者さんの気分やその人が持つ医師やスタッフへの好感度の違いなどが評価に大きく左右されてしまうという特徴があるのが、患者満足度調査なのです。
厚労省の調査のように、中長期の大きな推移を見るのにはいいのかもしれませんが、各病院やクリニックで行うにはいろいろな課題があるのが患者満足度調査だといえます。
医療現場の改善のために、ほかにも登場してきた調査
こうした現場の声を反映し、近年では一般的な「患者満足度調査」だけでなく、「ネットプロモータースコア:NPS(Net Promoter Score)」や「患者経験価値:PX(Patient eXperimentes)」という調査方法も登場してきました。
ネットプロモータースコアとは、患者さんや利用者のロイヤリティ(医師やスタッフに対する信頼や愛着)を測るための指標です。0から10までの11段階で測られ、0~6点は批判者、7~8点は中立者、9~10点は推奨者とします。スコアは、各グループの割合を算出、推奨者の割合から批判者の割合を引いた値となります。――計算式で表すと(推奨者数―批判者数)/(回答者数)×100となります。
スコアが上がるということは推奨者が増え、批判者が減ることですから、リピーターの増加と口コミによる新規患者さんの獲得が期待できるでしょう。逆にスコアが下がるということは、推奨者が減って批判者が増えることですから、患者さんの減少だけでなく新規の患者さんも期待できないことになります。
最近では日本人のNPS評価の特徴(中間値近辺を評価する人が多い)が指摘されています。中間値、つまり5~6点は批判者に分類されるので、海外に比べて日本のNPSスコアは低く出るという報告*2 もあり、日本人用に改良を加えたPSJ(Promoter Score Japan)を推奨する研究者も出てきました。
もう一つの患者経験価値調査は、一般社団法人日本ペイシャント・エクスペリエンス研究会によると、「患者中心の医療を実現するためにイギリスで生まれた考え方」で、「患者が医療サービスを受けるなかで経験するすべての事象」と定義されます。*3 つまり、「患者がいつ、どこで、どのような経験をしたのか、プロセスを測定」するものです。
設問でも、たとえば「ナースコールを押してから実際に看護師が来るまでどのくらい待ちましたか?」という具体的に客観的な事実を尋ねるものが多く、「医療サービスの実態を把握しやすいのが特徴」で、「課題を発見しやすく、改善に繋げる」ことができると、一般社団法人日本ペイシャント・エクスペリエンス研究会のホームページでは紹介されています。
医療現場に対する3つの調査方法をご紹介しましたが、それぞれに一長一短があることがお分かりいただけたでしょう。ですから、どれか一つの調査結果に満足するのではなく、3つの調査を上手に使うのが、来院割合のアップと新規患者獲得につながると考えられます。
では具体的にどのようにこの3つの調査を使えばいいのか、次回以降で見ていきましょう。
(文責:ブランディングエディター 内田朋恵)
