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孤立無援?共創?持続可能なこれからの開業

高齢化率30%を超える超高齢社会を迎える2030年。クリニック開業について、最新の医療政策や関連データをもとに考察していきます。

EPISODE 01

医師余り時代の幕開けと「外来制限」のリアル

都市部での開業抑制が始まる

東京23区のうち、17区が「外来医師過多」の候補に・・・・・・。*1
これは、2026年1月16日に開かれた「地域医療構想及び医療計画等に関する検討会」で公表された「外来医師過多区域」の9カ所うち、東京23区で該当する区の数です。*2

この9カ所は、外来医師偏在指標の「全国平均値+標準偏差の1.5倍以上」かつ「可住地面積あたり診療所数が上位10%」を基準として、選定されました。この「外来医師過多区域」の設定は、都道府県が外来医療が過密な地域を指定し、新規開業する医師に地域医療への協力を求める仕組みであり、東京以外にも大阪市や福岡市、神戸市などの大都市圏も2026年1月時点で対象区域になっています。

なかでも東京都は5つの二次医療圏、17区が候補になりましたが、最終的にどの地域が「外来医師過多」区域になるかどうかは、2026年4月の都道府県の指定を待つことになります(2026年3月8日現在)。 
この区域に設定されると、原則として「開業6か月前までの事前届出」が義務化されます。加えて、都道府県が地域で不足する外来医療(夜間・休日、在宅、公衆衛生等)への関与を要請できるようになり、要請に応じない場合は理由説明・勧告・公表に加え、保険医療機関指定期間の短縮(通常6年→3年以内、場合により2年)など、実務上にも大きな影響が生じることになります。

これまで「自由開業制」だった日本の医療政策の大転換となる政策と言えますが、この背景にあるのは日本の人口構造の変化です。地域枠などを中心に医学部定員を増員したことで、全国レベルで医師数は増え続けていますが、一方でだいぶ前から日本は人口減少局面に入っています。*3

すでに令和2年8月31日に開催された「第35回 医師需給分科会」で出された「医師需給推計の結果」*4    でも、2030年前後に需給が逆転し、長期的には医師供給が需要を上回る可能性があるという推計値が出されています。 一方で、何年も前から地域医療は医師不足により崩壊が危惧されています。

つまり2030年前後、日本では「医師不足」から「医師余剰」になり、日本の医療政策の焦点は医師の総数ではなく医師の配置へと移っていくのです。その象徴が都市部の外来医療政策だといえます。

医師の偏在対策から導入された外来医師多数区域

日本の医療政策は、「医師を増やす」から「医師の偏在をなくす」方向に大きくかじ取りを変えました。
その結果導入されたのが、「外来医師過多区域」の設定です。「外来医療に係る医療提供体制の確保」については、令和6年度から始まった「第8次医療計画」でも明記されていましたが*5    、外来医療が過密な地域を明確にし、医師の集中を是正するための制度なのです。

厚生労働省のガイドラインでは、「外来医師偏在指標の上位33.3%に該当する二次医療圏を外来医師多数区域とする」と定められています*6
この制度の特徴は、新規開業医に地域医療への貢献、役割を求める点にあります。 ガイドラインによると、地域で不足する医療機能として、「在宅医療の提供体制」「夜間や休日等における地域の初期救急医療の提供体制」「産業医、学校医、予防接種等の公衆衛生に係る医療提供体制」などが挙げられています。

この制度の影響が最も大きいのが東京です。先述の通り、17区が「外来医師過多区域」の対象になっており、医療行政の視点では、東京の外来医療はすでに「過密状態にある」と認識されていることになります。

これまでのように「都市に開業すれば安泰」という時代は、終わりつつあります。 今後、都市部で開業するなら、在宅医療への参加、地域医療機能の分担、行政との協議といった要素が求められる可能性が高いでしょう。つまり開業は単なる個人の判断ではなく、地域医療の役割のなかに自動的に位置づけられる方向へと変化しているのです。 「どこに開業するか」だけではなく、「どの地域医療を担うか」が重要になってきているといえるでしょう。

(文責:ブランディングエディター 内田朋恵)


参考文献
*1 「東京保険医協会」HPより

*2 「医師確保計画の見直し等について」(令和8年1月16日 第9回地域医療構想及び医療計画等に関する検討会 資料3)P24参照

*3  「医師確保対策の概要及び今後の課題・スケジュール等について」(令和6年1月29日 第1回医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会 資料1)P4参照

*4 「令和2年医師需給推計の結果」(令和2年8月31日医療従事者の需給に関する検討会 第35回 医師需給分科会資料1) P36参照

*5 第8次医療計画については、次の論文を参照のこと。「総説 第8次医療計画について」柿沼倫弘(国立保健医療科学院医療・福祉サービス研究部)保健医療科学 2024 Vol.73 No.2 p.112-117

*6 「外来医療に係る医療提供体制の確保に関するガイドライン ~第8次(前期)~」(令和5年3月る研修」2025年11月17日 日本医師会HP

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