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「開業構想と開業実務準備」 綾瀬ハートクリニック 佐藤一樹院長

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第1 開業の決意

「小児心臓外科の先端医療に携わり、アカデミックな世界に身を置きながら臨床医を続けたい」。

私は、「開業=敗北」と思っていました。教授とまではいかなくとも、最低でも基幹病院の診療部長等で先天性心疾患のこどもを助けていくことが、自分の使命であり幸福であると考えていました。しかし、この固定概念を転換せざるを得ない医療事故に巻き込まれ、専心すべき世界から身を引く年月が続きました。この時期に、「医者になるなら『教授』か『開業』以外は考えていなかった。」という先輩医師と語らううちに、インディペンデントの魅力を理解し開業によって幸福になった自分を思い描けるようになりました。

今年の「ジャミックジャーナル7月号」に掲載された私の「開業直前実務準備」に加え、失敗のないスタートダッシュのためには、「開業構想段階」も重要なポイントですのでお話ししたいと思います。

第2 開業構想段階 — 増患対策も同時スタート

1. 事業としての構想-「絶対成功させる」

「貯金も尽きた状態で数千万円の借金を背負って退路を絶ち、事業としての開業を成功させる資質が自分にあるのか?」

この不安解消のためには、「絶対成功させる」という意気込みだけではなく「根拠ある自信」が必要です。事業に向かうに当たり、「常に大勢の人の輪の中にいて、和を保つ人生を送ってきた」ことが、プラスに働いたと思っています。現在でも、「信頼できる人とのつながり=絆」の形成が、最重要であると実感しています。

2. 開業構想開始と同時に「増患対策」「増収対策」もスタート

どんなプロジェクトでも「戦略的思考」が不可欠です。開業にも戦略的構想を練る時間が必要です。実際に、駆けだす前に事業の大枠を把握するべきでしょう。

無床診療所事業の成功とは、極めて単純化すれば、総診療報酬を上げること、すなわち総受診患者数を増やし、一回受診当たりの単価を上げることです。開業成功の「最初の試金石」は、勤務する病院での外来患者数を、他の院内医師よりも増やしてキープできるかどうかにあると思います。勤務医時代に外来患者数を増やせない医師が、新規開業して大成功などということはあり得ません。私は丁寧な問診、診察、説明を行い、検査も含めてクオリティの高い外来診療に努め、常に「この将来自分の診療所に連れていく」という気持ちで患者さんとその家族も大切にしました。

3. 開業構想と同時に決定した主任看護師

安定した循環器診療には、循環器疾患の問診・コミュニケーション、検査とその評価ができる右腕、同志ともいえるアシスタントパートナーが必須です。

私は、開業を決意した4年前の時点で最も優秀で問診能力があると評価した看護師一人だけに開業の意志を打ち明け、そのまま現主任看護師になってもらっています。勤務病院では、常に看護師、検査技師、医療事務員を「自分の雇うスタッフ」として信頼が置ける人物か否かという評価の目でみながら病院で働いていました。先輩開業医の全員から、いやというほど「雇用の難しさ」「スタッフ間のいざこざの問題」について聞かされ「看護師と事務員の一人は信頼のある人を決めておけ」とのアドバイスをもらっていたからです。スタッフは、人間的にも信頼がおけると確信のある人で固めたかったのです。

4. 物件はある日突然? 「開業地区の決定とフィールドワーク」

勤務地足立区の病院外来患者(多くは老人)の半分が新診療所に転院してくれば大きな失敗はないはずです。開業は、ビル診療で勤務地の「最寄駅から2駅以内、徒歩5分以内」と大まかに決めました。医師会の情報も入手しはじめ、葛飾区が望ましいと考えました。診療圏調査は先ず自分の方法で区の図書館でさまざまな人口調査表をひっくり返して地区別年齢別人口分布や診療所のある場所を確かめました。

しかし、何より大切なのは現場を歩くこと。これから2-30年働く場所です。開業前4年から対象となる5つの駅周辺の不動産会社を手当たり次第に訪問し、紹介された物件に向かって駅から実際に歩き、その周囲の診療所の様子をのぞいて評判を口コミで調査しました。逆に、街を歩いて空いているテナントを見つけて不動産会社を訪ねました。さらに、駅の改札を何時間も眺めて人の流れや年齢層を視覚的に実感するようにしました。

不動産物件はある日突然出てくるものです。突如出現した物件に飛びつき、勢いで開業して後悔する危険もあります。逆によい物件を目の前にして、あれこれ検討しているうちに、他の人に契約されてしまい、その後何年も待つことになるかもしれません。物件を見る目を養いながら、対象地区でいつ新しい物件が出ても的確な評価をできる能力を養いながら待機しました。もちろんインターネットのサイト上で物件をチェックし続けました。

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