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the医院開業|医療法人化のメリットとデメリット、医院の継続運営には医療法人化も検討を

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開業ドクターから学ぼう開業ケーススタディ

開業後の診療所経営について具体的ケースを検証し
経営改善につながる対策を『処方箋』として解説します。

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医療法人の活用による税務経営戦略

新制度の医療法人は不利?-問題点に対する処方箋

法人制度のメリットとデメリット、医療の継続運営には法人制度を理解し税務戦略をたてる。


問題点に対する処方箋

セミナーで講師がまず強調したことは、個人事業と医療法人とでは税制上の基本的な考え方が違うということでした。 医療法人が事業の継続性を考慮した税制になっているのに対し、個人事業は生活税制とも言われ、家計と隣接する部分の取り扱いが必ず問題となる構造となっており、それは①税率構造の違い②必要経費の考え方によく現れているということでした。

税率構造の違い

個人事業の場合、所得税の適用となりますが、所得税は超過累進構造となっており、所得が多くなればなるほど適用される税率が高くなります。現行では5段階税率で、最高では住民税と合わせて50%の税率となります。 対して、医療法人は比例税率で一般の実効税率は約40%程度です。従って、所得が高い場合には法人税の適用を受ける方が有利といえます。

個人(所得税)と医療法人(法人税)の税率差 図1 通常のクリニック 図2 法人化した場合の税金

2.経費の取り扱いの違い

(1)家族従業員に対する給与

個人の事業において、同居(同一生計を営む)親族に対する給与は原則的には事業の経費となりません。ただし例外的に、「青色事業専従者」の届出を出すことで、この専従者となった奥さんや子供などに給与を支払うことができますが、その支給額は事前に届出が必要で、また業務内容や他院の給与平均値などと比較して過大であってはならず、調査で過大と認定された場合にはその分は必要経費とすることができません。いわば税務署から厳しいワクを嵌められた中で経費算入を認めてもらえているに過ぎないといえます。 またこの専従者給与は学生は性質的に不適当とされているため、いくらスタッフ以上に働いていたとしても大学生である子供に給与を支払うことは難しいところでした。 これに対して医療法人の場合、役員に対する給与は、その業務対価として適当なものであれば、誰に認められるものでもなく当然に経費となります。もちろん、正当な業務対価であれば、学生であることが障害となることはありません。

(2)交際費や車両費などの家事関連費

また所得税の考え方では、必要経費となる部分と家計の計費とがはっきりしないものを「家事関連費」として規定していますが、この家事関連費は
① 主たる部分が業務上必要な経費でかつその必要である部分を明らかに区分できる場合
② 取引の記録などに基づいて業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされる部分に相当する経費
のいずれかに該当する場合のみ個人事業の必要経費とすることができると規定されています。
つまり、家計で使用することもある支出の場合、明確な基準や直接的な業務関連性がなければ経費算入はダメ、ということになるわけですが、これが厳密適用された場合には個人事業の必要経費は非常に窮屈なものになってしまう可能性があります。

一方で法人税にはそのような規定はなく、医療法人の事業運営に必要とされる経費が広く認められています。もちろん自動車も法人名義で業務使用するものであれば原則的に法人の経費になりますし、医師会や近隣の先生方、取引業者などと情報提供や相談のため遣う交際費なども法人運営のコストとして十分に計上可能となります。 その他にも、法人契約の一定の生命保険料が経費となること、また院長や奥さんなど役員の退職時に法人から退職金を受け取ることができることなど、個人医院には概念からして無かった制度や取り扱いが法人にはあり、個人事業と比べてかなりメリットが大きいことが分かりました。

また最も基本的な取り扱いとして、個人クリニックはその利益が全て院長の個人事業所得となるのに対し、医療法人では院長(理事長)は法人から役員給与を受け取ることとなり、このとき「給与所得控除」の適用を受けることで構造的に減税となる利点も見逃せません。役員給与は、毎年更新後一年間は定額に据え置かなければなりませんが、安定的な収入が維持できている場合には、実務的に法人との利益バランスをとることも難しいことではないようです。

一方で医療法人のデメリットとしてまず登場する厚生年金ですが、コスト増と法人化の節税メリットなどとを相対させて考える必要があること、広い意味で将来の年金積立や福利厚生のアップに繋がることを考慮すると一概にデメリットとも言えない面があります。

また新制度の医療法人でリスクとされる解散時の財産問題ですが、役員給与の設定と役員退職金とを上手く組み合わせることでこれを回避できること、またJクリニックのように後継者がいる場合には、医療法人に事業財産を戦略的に貯めることで相続・事業承継の対策にもなるメリットに転換することもできます。

意志決定してからほぼ1年後に医療法人となったJクリニックでしたが、その後会計事務所のアドバイスにより収支構造を見直し、それまで家計費として費消されていたさまざまなコストを法人の経費としてきちんと処理することで、法人化後数年経過後には財政的な余裕がしっかりと実感できるようになりました。また退職金の積立も含め、将来の展望も踏まえた準備も着々と進めており、毎日の診療にも張りが出るようになったのです。

総括

保険財政の逼迫や医師・看護師の不足、また競争激化など医業経営を取り巻く環境は厳しさを増すばかりです。医療事業を継続して運営していくためには、医療法人の制度を正しく理解した上で上手く税務戦略を立て実施していくことがますます大切になってきています。

(文責:税理士法人アフェックス 旧 税理士法人町山合同会計)

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