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開業後の診療所経営について具体的ケースを検証し
経営改善につながる対策を『処方箋』として解説します。

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コスト削減と借り換えによる経営改善

検証なくコスト投入しがちな医療機関-問題点に対する処方箋

一定の収入で最大のキャッシュフローを生むには?支出一つ一つの"仕分け"の効果は。


問題点に対する処方箋

「支出項目の見直し」
1.診療時間の見直しと人件費

Iクリニックは、開業時に差別化を考えた結果、午後の診療時間を16:00〜19:30としており、それなりに医院の特徴として認知もされていました。そしてスタッフの体制は「仕事に責任感を持ってあたってもらうため」常勤のみとしてきた院長でしたが、現実にはこの診療態勢を維持するのに不可欠であったパート職員の確保が困難であったという側面が大きかったのです。直近で人件費率は30%を超えており、他の同規模のクリニックに比べて明らかに高くなっています。人件費押し上げの最大要因がこの診療体制にあることから、まずこの見直しを進めることにしました。

診療科目や立地条件から、夕方以降の来院数はあまり増えていませんでしたが、18:30以降1時間の来院数を調べたところ、日によっては1〜2名という日もあり、完全にコストが上回っているようです。もちろん診療時間が長いことが患者さんの安心感に繋がっている効果も考えられますが、ここは思い切って午後の診療時間を繰上げ、15:00〜18:30と変更することとしました。

そして退職者の補充のためパートスタッフの募集をかけたところ、午前・午後ともに十分な応募があり、シフト勤務で延べ4名を採用しました。

2.家賃引き下げ

イメージ

Iクリニックで最も特徴的なのが、広い1階に加えてさらに地下1階を使っていることでした。広いスペースを確保することは、面積を広げることが難しいビル診において利点である反面、高い家賃が固定費となって経営を圧迫することにもなるため慎重な判断が必要です。地下フロアは1階を使用するテナントの専有スペースとして使えるもので、当初契約時には坪単価をかなり抑えたのですが、実際の利用率はリハビリも1日に数名程度と低いままで、その賃料は診療報酬に殆ど貢献していない管理コストとなっていました。

ここで院長は普段から親しくしているビルオーナーに思い切って経営の概況を話し、賃料の値下げができない場合には地下階の賃貸借契約が更新できないことを伝えたのです。院長の真摯な依頼に、最初は難しい様子だったオーナーも最終的には理解を示し、期間限定ではありますが全体で20%の値引きに応じてくれました。

3.広告の見直し

クリニックの最寄駅は急行停車駅で乗降客も多く、駅構内の看板は認知度を上げるのに効果が期待できました。開業時からたまたま空いたスペースにクリニックの広告を設置していたのですが、管理費が半年で60万円と高額なこともあり、その費用対効果が気になっていたところでした。そこで問診表の来院動機を改めて集計してみると、"駅の看板を見て"は"インターネットを見て"にずいぶん前から追い越されていたのです。

駅を利用するたびに自院の看板になんとなく満足感を持っていた院長でしたが、改めてその効果を考えたとき、新患獲得のための役目は終えたのではないかと思われました。そこで契約更新を機に掲出を止め、代わりにホームページをリニューアルしてSEO対策を施し、専門の呼吸器科とアレルギー科を全面に押し出した特徴のあるサイトにしました。なお費用は駅看板の半年分以下で収まりました。

4.借入返済期間の借換え・長期化

さらに資金繰りの問題として、会計的な利益は算定されるものの返済金が相対的に多いため、結果は手元資金がかなり少なくなるという構造にも問題がありました。借入金は開業時のものに加え、3年前に導入した医療器械と運転資金の分とがあり、残返済期間はそれぞれ4年と2年です。そこで以前たまたま営業に来た地元信金に相談し、これらをあわせて7年間で返済の形に借り換えをしました。今後の事業計画など、融資のための資料作成には根気が要りましたが、他の見直しを総括して収支構造を改めて認識することができ、機会としてむしろよかったと実感しています。

借り換えの結果、返済金は以前の半分程度に減少しました。返済期間は延びましたが、短期的に資金が不足するリスクが減ったことはかなり安心感につながりました。

「コスト見直しの効果」

常勤体制の見直しの結果、総人件費は以前の約2/3以下にダウンしました。パートのスタッフもまじめで勤務態度なども常勤と遜色なく、またスタッフの頭数が増えたことからむしろ以前より休暇がとりやすくなり、残った常勤スタッフから感謝されています。一方で診療時間が前倒しとなり患者数が減少することが懸念されましたが、結果としてほとんど影響がなかったようです。従前の夜間来院層は利便性を期待する急性疾患の患者さんが多く、慢性疾患の患者さんの夜間外来は思いのほか少なかったという背景があります。

また広告の見直しも効果が出始めており、ホームページで自院を知った新しい地域からの患者さんも増えてきました。院長が専門とする疾患の診療が多くなるにつれ、口コミの患者さんの比率が上がるという現象が顕著になってきました。結果として診療単価も上がって同じ患者数でも収益性が向上するという副次効果も得られました。

さらに家賃引き下げ、借入金返済の返済額の減額も財務的な効果は大きく、クリニックの資金繰りは半年後には大幅に改善することができたのでした。

総括

医療機関の経営を考える上では、ややもすると患者数増を目標とするあまりコストを検証することなく投入してしまうことが起こりえます。しかし家賃などの固定費は削減がなかなか難しく、また人件費も弾力的な体制をとっていないと簡単には削減できません。 増収・増患を追求することが、医療保険財政上の理由から今後ますます難しくなっていくものと思われることから、コストの削減は今後ますます重要性を増してくるといえるでしょう。一定の収入で最大のキャッシュフローを生むよう、コスト構造の見直しは継続的に行っていくことが大切です。

(文責:税理士法人アフェックス 旧 税理士法人町山合同会計)

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